ネーム改稿のための覚え書き
漫画を描く
しばらく漫画が描けなくなっていたけれど、去年末にいろいろあっ他のがきっかけで、年があけてから一念発起また漫画を描こうと思った。
とりあえず四月の名古屋コミティアに出すのを目標にする(のちにコロナで中止になるのだが)
一月はぼんやり何を描くか考えていた状態。名コミの申し込み締め切りが2月頭だったので、内容はぼんやりまとまりきらないまま、イメージボードを兼ねてのつもりでとりあえずサークルカットを描く。
描くのがとにかく久しぶりだったので、とにかく描くためのモチベーションが湧くような題材を考えた。そこで思いついたのが、川辺の生活。実家が川の近くで、川辺の風景が好きだったのでそういった風景が描けるような話にしようというのが一つあった。サークルカットを描いた頃は胸キュンボーイミーツガール的なものを考えていた気もします。とにかくエンタメ度高めて読者に喜んでもらえればモチベーションも上がるのでは?という打算。
絵的なおもしろさも欲しいので現代を舞台にゴーレムを作る話にしようと考える。このアイディアは前にSF小説描いたときの設定の流用。もとをたどるとダンジョン飯2巻のおまけ漫画にあった、ゴーレム開発をITシステム開発に準えた4コマ漫画になるか。
並行して近くでやってたクロッキー会に参加する。絵もだいぶ離れてたのでなんとかリハビリ。
2月中旬から構想をまとめる。
作業はネームタンク渋谷分室の作業会で行った。とにかく作業を進めるとかかりが欲しかった。ネームを書き始めるが、どうにもフォーカスがぼやけていて結局ボツにする。上にあげたアイディア意外にも、公正についてのテーマを盛り込もうと考えていた気がします。これはおそらくるグウィンのオメラスから歩み去る人々を読んだ影響。とにかくアイディアが散漫でストーリーらしいストーリーにまとまらない。
描きたいテーマやモチーフはいくつかあっても、複数盛りこむことは決して悪いことではないと思う。それどころか重層的に作ることは大事だと思うので基本的に良いことだろう。
しかしまとまりが悪いままではしょうがないので、一部は切り捨てて次作に回すことにする(この決心をするのに大分時間がかかる)
次に、というかほぼ並行して、キャラクター配置をいろいろと考える。自分の場合テーマから考えることが多いので、それを展開するためのキャラクター属性、あらすじは大まかに導けるのだけれど、それを具体的にどういったキャラクターに割り振るかは難しいところ。キャラクターどうしの年齢、性別、職業の組み合わせを考える。属性を入れ替えてみたり、一人の役割を二人に分割したり、逆に二人の役割を一人にしてみたり。視点を誰にするかを考える。
今回はストーリ上の主人公と別に視点人物を撮ることで、テーマを引いた目で描くことにした。この語りは構造は蟲師から着想。すなわち、マレビトがある共同体に訪れて誰かの悩みを解決して去っていくという構造……
ようやくまとまってきたので、改めてシナリオを書き出す。流れがうまくつながるように直したのちネームを描き始める。書く過程でシーンを肉付けするためだったり見せ場を作るために、キャラクターの設定やバックグランドを発見していく(やってみるとこの工程は“発見“としか言いようがない)
ここまでくるとすんなりネーム第1稿ができあがる。作業会の参加者に見てもらった感じだとわりと好評だった気がする。このころは3月の中旬ぐらい。
3月下旬頃は下書きを始める。同時にネームにしてみると流れが不自然なところがあったので、つながるようにシーンを追加する。
このころは世間ではコロナが賑わってくる。
このあたりで同人イベントの中止が発表されだす。目標だった名ティアも中止に。どうしよう。
ネームのリライト
せっかく猶予ができたのでじっくり改稿することにした。ということでハリウッドリライティングバイブルを読みはじめる。
ハリウッド・リライティング・バイブル
ライティングはカオスから秩序へと向かうプロセスである。その秩序を早く手に入れるには、どれほど速く原稿用紙の升目を埋めるか、そして、どれほどライティングのプロセスや技術に関する知識を持っているかに関わってくる。またそれは、アイディアを脚本にする際に直面する困難さや、必要な調べものの量にも関係し、どれほど自分自身の創作のプロセスに自信を持てるかにも関わってくる。次々と浮かぶアイディアを素早く捉え、考え、まとめ上げる人もいるだろう。一方で、じっくりと考え、何ヶ月もの間アイディアを煮詰めては思いを巡らす、という人がいてもよい。脚本創作のプロセスは正しい方法などなく、そのプロセスはまさに人それぞれなのだから。
なんと心強い言葉か。自分は後者のタイプの作家が好きなので、おそらく自分も同じ分類だと思う。
さてさて、アドバイスをもとに、問題点を付箋に書き出してみる。
ライターズ・ノートを書く
ライターがノートを書くことで自分自身の生活や問題を探るように、ノートを作ることによって登場人物やテーマを探る機会を得られる。
- 登場人物の一人称で書いてもいいし、登場人物を三人称で書いてもかまわない
- 作り上げている登場人物とあなたが知っている人々との共通点を書くことも一つの方法だ
- ノートを通してテーマを探求することもできる
キャラクターの一貫性についてはかなり気になっていたので、ライターズノートを書くことにする。
とりあえず書いてみよう
経験豊かなライターほど、脚本を書く前にストーリーと登場人物について十分深く掘り下げるらしい。
一旦脚本を書きはじめたなら、終わりまで書き上げることが大切だ
ネームはとりあえず書いた!
三幕構成
この辺の知識はだいぶ入ってるので省略。
シーンの見せ方
- 優れたシーンは、観客がストーリーを理解するために必要となる情報を提供するとともに、ストーリーを前進させる
- 優れたシーンは、主人公のキャラクター性を明らかにする
- 優れたシーンはテーマを探求する
- 優れたシーンは、ビジュアル・イメージの構築も行う
また繰り返し語られるのは「語るより見せよ」説明セリフを見つけたら、キャラクターの具体的な行動に置き換えてみる。ファンタジーやSFなら、その世界ならではの設定を生かしたアクションにするのがいいと思う。
■ビートをはっきりさせる
「Aが起きてBが起きてCが起きる」みたいなストーリーがリズムよく展開するように意識する。
ビートがわかれば読者も乗りやすい。
■短調なシーンはアクションを加える
『危険な情事』を例にひかれている
■説明シーンに視覚性とドラマを持たせる
SFでは特に大事だと思われる。草野げんげんさんは変人のようでいてこのへんにすごく気を使われていると思う。
(CTuber小説の科学考証説明パートをラジオの科学子ども相談にするのはめちゃめちゃ面白かった)
本の中ではインディージョーンズが例で出されていた。このシーンはそのまま真似してみたい。
■どこでシーンを始め、どこで終わらせるか
始まりが早い→停滞する。時間の無駄
始まるのが遅い→シーンを理解するのに必要な情報がおたらされないので緊張、対立、サスペンスを築くのに不十分
どこでシーンをはじめるべきかを決めるには、まずどこでシーンを終わらせるかを決めることだ。
シーンが次のシーンで、どういった方角へ向かう必要があるのかについても考えなければならない
- シーンのポイントは何か
- なぜそのシーンが必要なのか
- そのシーンが伝える最も重要な情報は何か
- シーンの焦点は何か
- どこに向かっているのか
説明セリフにならないようにするためには情報でなく出来事を考えるのがポイントとのこと
シド・フィールド本
リライティングバイブルを読んでる途中に出ていることを知ったので購入。
結論としては、入手のしやすさにしても内容としてもこちらの方がいいと思います。懇切丁寧という点ではこちらの方が上。内容の具体性、全体の体系性の点でも断然良い。問題のチェックシートまでついてくる。おもしろいのは、何書いても批判してくるうちなる批評家をどうねじ伏せるかという手順をめちゃめちゃ具体的に書いている点だ。
とはいえ完全上位互換でもない。理ライティングバイブルはあれはあれでいいところもある。読者の注意を切れさせないための作劇上の細かいテクニックやキャンベル式神話論の応用はシドフィールドの本にはなかった。
通読したのち、巻末にあるチェックリストをやってみる。以下ピックアップした課題
- ストーリーg途切れ途切れでまとまりがない
- あまりにも多くの事がすごい速さで起こる
- ストーリーが緊張感とサスペンスに欠ける
- 物語が曖昧すぎる、薄すぎる、あまりに作為的
- 主人公にあまり共感できない
- 主人公の劇的欲求が曖昧で不明確
- 主人公は常に状況に反応するだけで、真の視点を持たない
- 登場人物の葛藤が不十分だ
- 目的達成のリスクが低すぎる
- 会話がぎこちなく、洗練されていない
- 素材にメリハリがなく退屈だ
さてこのシドフィールド本は、問題のある場所を3つの要素に還元する。すなわちプロット/キャラクター/構成。
上に箇条書きした課題の原因箇所はこの本のガイドに則るとキャラクターにあるようだったのでキャラクターのバックグラウンドやそこから生まれる思想、それと欲求について深掘りすることにする。バックグラウンドを考えるにあたって、時代考証もしっかりする必要を感じた。
何が課題か
- キャラクターのバックグラウンド、欲求
- 時代設定、歴史考証
- セリフでなくアクションで表現する
- シーンはどこから初めてどこで切るか
他にも検討し直す必要があるものはたくさんある。
リサーチ
ストーリーから逆算して、キャラクターの思想を考える。主に科学者の軍事研究
5月末に図書館が使えるようになったので、図書館データベースで本を検索して借りる&役立ちそうなところをコピー、を繰り返す。
時代背景の調査にはナチ占領時代のフランスについてやフランス占領時代のベトナムの調査についての本を。
世界設定を細かく詰めるためにカバラとAIの関係などの本を借りる。
……以上を元にシナリオを書き直す。結局微調整といえば微調整。時間かけた割にこれしか直さないのかとがっかりしたりもする。
7月からはネーム第二稿に入る。が、その前に今度は映像演出の技術について調べようと思う。