雑記:ファンタジーの2つのベクトル その2『リトル、ビッグ』について

大阪杯、エフフォーリアが沈むとは以外でした。一週前追い切りでも反応があまり良くなかったらしいので、もともと調子が良くなかったようです。たぶん輸送や阪神競馬場が不利に働いたとか以前の問題な気がしますね。

 

先日、ファンタジーについて調べてみようと思い図書館で本をいくつか借りました。

  • ファンタジー文学入門 ブライアン アトベリー著
  • 魔法ファンタジーの世界 脇 明子著
  • 児童文学論 リリアン・H.スミス著

あと機龍警察の家宅と狼眼殺手も借りた。ファンタジー関連で3冊も借りたけど1冊目真面目に読んでたら他は貸し出し期間では読めなそうかも。

 

パラパラ読んだ感じファンタジーの成立はどうやら割と最近のようで、叙事詩やおとぎ話(フェアリーテイル)から派生分離して独立したジャンルになったのはトールキン以後らしいです。他に驚いたのは『ファンタジー文学入門』におてはジョン・クロウリーが特別高い評価を受けていること。「トールキン以後の最大のファンタジー作家のひとり」とまで言われている。

しかし体感的にはジャンルファン以外では知られていない作家なきがします。日本で有名なファンタジー作家と言うとまずはトールキン、ついでル=グウィン。あとルイス、エンデ、JKローリングあたりが来る感じでしょうか。このあたりにジョン・クロウリーの名が並ぶことは、まああんまり聞いたことがないです。

 

ジョン・クロウリーの作品は、長編はSF小説の『エンジン・サマー』ファンタジー小説の『リトル、ビッグ』が翻訳されているがどちらも絶版。短編集は『ナイチンゲールは夜に歌う』『古代の遺物』が出ているが前者は絶版、後者は国書刊行会で出ているもののまあ海外文学マニアしか買わななそう(失礼)である。最大の長編作『エヂプト』シリーズは昔翻訳計画があったらしいが立ち消え状態の様子。観測範囲ではSF好きの中にはエンジン・サマーを寵愛しているものも一定数おり、知る人ぞ知る、という感じでしょうか。

自分もエンジン・サマーは好きなんですけど、クロウリーで一番となるとナイチンゲールは夜に歌うに収められた『時の偉業』の方です。”究極の歴史改変SF”の名に偽りなし。完璧な小説のひとつだと思っています。

さておき、ジョン・クロウリーの国内外の評価をまとめておきます。

■受賞歴 *1 

 

■ジャンルファンの評価

国内のSFコミュニティの評価ということでは、SFマガジンの2014年のオールタイム・ベスト投票では『エンジン・サマー』が45位となかなかの高さ。

海外の方では、ローカス誌のオールタイム・ベストファンタジー小説のランキングで『リトル、ビッグ』が10位にランクイン。

 

■主流文学との評価のギャップ

リトル、ビッグの訳者あとがきにはこのように書かれている。

旧年間の歳月を賭して完成されたこの大作は発表と同時に各種マスコミで初評価、評論家に絶賛され、翌年の世界幻想文学大賞を受賞しました。

しかし世間の受け入れられ方はそう単純ではなかったと『ファンタジー文学入門』では語られます。

このような魅力を持っているにもかかわらず、『リトル、ビッグ』は、少数のファンタジー研究者以外にはほとんど注目されなかった。形式的なごく普通のファンタジーを愛好する者には、この作品はわかりにくいものであったし、複雑な作品に耐えうる洗練された読者は、この作品のことを聞いたことがないか(文学の専門誌には一度も書評が出ていない)、または作品がファンタジーだということで敬遠してしまうかのどちらかだったのである。

本書ではつづけて『リトル、ビッグ』の2年後に出版されたマーク・ヘルプリンの『冬物語(ウィンターズ・テイル)』と比較しています。両者はよく似た要素を持っていましたが、ウィンターズテイルの方は主流文学として世に出され、評論家たちはポストモダニズム文学の枠組みで評価しました。一方リトル、ビッグはSFファンタジーレーベルで出版された。そのため前者はベストセラーになったにもかかわらず純文学として評価され、後者は大衆文芸とみなされたそうです。

しかし著者はウィンターズ・テイルよりもリトル、ビッグの方が優れていると評価します。

しかし、これはクロウリーのものほど創意に富んだ作品ではない。調子やスタイッルはより単調だし、テーマにもそれほどの複雑さがない。作品の本当の面白さは、最後の三百ページか四百ページで薄れてしまう。(中略)作者が物語っている内容に対して距離を起き、醒めた目で見ていることが、作品の魅力を減じるのである。

海外でもジャンル作品への差別みたいのがあるんですね。しかしウィンターズテイル、アマゾンレビューを見るとアメリカの評論家と全く同じようなことを書いてるものがある(受け売りで書いてるのだろうか)

 

『リトル、ビッグ』は何年か前に買って(古書価がめちゃくちゃ高騰してた)積んでいたけれど、トライしてみようかな?(ここまで書いていて読んでない)

 

*1:wikipediaからコピペ